ギャラリー間で開催中の藤村龍至氏の個展「ちのかたち――建築的思考のプロトタイプとその応用」
六本木ヒルズの森美術館で「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」を観た後は、乃木坂のギャラリー間に向かった。
いつもおもしろい展示をしているギャラ間では、現在藤村龍至氏の個展が開催されている。
それも9月30日までなので沖縄から戻ったら見られないので、昨日しか時間がなかった。
「ちのかたち――建築的思考のプロトタイプとその応用」
藤村龍至氏は、東浩紀氏のゲンロン界隈のイベントや本にも登場していて、最初は次世代の磯崎新氏のような位置付けの理論派建築家の印象だった。
だけど、磯崎新氏のような深読みしないと難解な理論というよりは非常にオープンな思考方法がおもしろいなぁというように思ってきて、何となくだがTwitterをフォローしたり、本を買ってみたりしていた。
近所にその藤村龍至氏の集合住宅があるし、初めての個展(多分)ということで、結局ギリギリになったけど、観に行きたいと思っていた。
「超線形設計プロセス」と言う設計手法
写真は東京の集合住宅「BUILDING K」という作品。
藤村龍至氏はこれを含めて全ての作品の中で「超線形設計プロセス」という独自の設計手法を提唱している。
単純な形状から出発して、「ジャンプしない」「枝分かれしない」「後戻りしない」という単純なルールを設けて細かな与条件をクリアしつつ、同一スケールの模型で履歴を残しながら、最終的に建築を作っていくことを目指している。
今回の展覧会では、その「超線形設計プロセス」の中で作られた模型を「線形」に展示しているので、そのデザインの変化が見て取れる。
個別に何の条件に呼応しているかは、同タイトルの本を読むとわかりやすい。
この「超線形設計プロセス」は、履歴が明確になるのでクライアントを含め協働するグループともコミュニケーションが活発化しやすいのだと思う。
実務的なことを言うと、それまでの「言った」「言わない」のやりとりも含めて明確になって仕事しやすい気がする。
「G-chiar」は、Googleの画像検索で出てくる画像をもとに椅子を設計するプロジェクトで、集合知を使ったいかにも現代的な思考の作品だ。
「鶴ヶ島プロジェクト」に見られるオープンな設計手法
その中でも「鶴ヶ島プロジェクト」言われるプロジェクトは、その設計手法の可能性を感じさせてくれる作品だった。
いくつかのグループに別れて模型を作成してプレゼンが行われて、それを諸条件や都度現れる課題、地域住民による投票に応じてフィードバックを繰り返し、最終案に統合してくオープンな方法が取られていた。
ワークショップ的なオープンさを持ちながら、最大公約数的な投票という多数決システムを超えて、集合知を利用した濃密な建築ができていくプロセスはとても現代的で、色々なコラボレーションに活用したり、建築以外のシステムにも応用したりできる気がした。
「集合知」と「空間」を意識した展示
3階の中庭には、公共空間を想定して作られた「ROOM_MA」を展示。
今回の展覧会のためにデザインされた複数の使い方を想定した家具「離散空間家具」が配置されている。
4階に上がると「ROOM_DS」という、アントニ・ガウディの作る建築のような雰囲気の空間「離散空間」がデザインされている。
厚紙をハトメで留めていいる不思議な構造体が連なっていて、その間に映像や家具を展示。
「G-chiar」を発展させた「DEEP LEARNING CHAIR」は、ベイマックスみたいでかわいい。
多分、展覧会自体は事前に藤村龍至氏の本を読んでいないとわかりにくいかなとは思うが、事前に読んでいるととても納得できる展示だった。
藤村龍至氏の提唱する「超線形設計プロセス」は、建築だけでなくデザイン全般、もしかしたらそれ以外の分野でも役立つ方法論だと思うので、専門外の人でも見る価値はありそう。
そんな感じで石垣島行ってきまーす!
ちのかたち――建築的思考のプロトタイプとその応用
会期:2018/7/31(火)~9/30(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜日
入場料:無料
会場:TOTO ギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3階)
URL : https://jp.toto.com/gallerma/ex180731/
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